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Route 613

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      Lux Fur

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      いまよりずっと先、人類の衰退する ほんのすこし前のおはなしです。あるところに、ルシファー という 殺人鬼がいました。

       

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      いきものには、やくめがあります。

      たとえば、植物は 空気中の二酸化炭素を分解して酸素にするやくめがありますし、ミミズやダンゴムシなんかは 枯れたはっぱを細かくして土にかえすやくわりをもっています。

      ルシファーのやくめは、人類という種を 完全に消し去ることにありました。

       

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      殺人鬼なんていうと、おそろしいひびきがしますが、なにも恐がることはありません。

      これは今よりもずっとずっと、気が遠くなるくらい先のおはなしなのです。

      赤ちゃんが眠るみたいに、オルゴールが止まるみたいに、ゆるやかに終わる人類の、幕引きを任されたものが、このルシファーなのです。

      ルシファーは、ぼろぼろのバギーに乗って、生き残りのにんげんを探します。

       

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      ルシファーは、へんてこなにんげんをみつけました。

      ルシファーが、自分のやくめを果たそうと、そいつに拳銃を突き立てると、そいつは声を張り上げました。「やめてくれ!ぼくはにんげんなんかじゃない。」

      きぐるみを脱いで証明しろと、ルシファーが言い返すと、それはできないといいます。「ぼくたちは、つがいになるときめた相手がいないと、決して毛皮は脱がないんだ。」

      仕方が無いのでルシファーは、そいつの首に縄を結んで、いっしょに連れて行く事にしました。


       

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      ルシファーは、そいつのことを、「ソイツ」と呼ぶことにしました。

      ソイツは、群れの中で、つがいをみつけられなかった、落ちこぼれのオスでした。ルシファーが人間とまちがえたって仕方ないほど、ソイツの体はやせて小さく、 毛皮だってつくりもののようにふわふわで、野生の生き物のようにはみえません。

      でも、ルシファーのバギーの助手席には、ちょうどよい大きさでした。水色の毛皮だって、昼間はうっとうしいけれど、さむい砂漠の夜なんか、よい案配でした。

       

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      ルシファーはずっとひとりだったので、ソイツのおしゃべりはうっとおしいものでしたが、じきに慣れました。

      ソイツは、あてもなく人間さがしをするルシファーを見かねて、ガラクタをつかって人間探査機をつくりました。この、人間探査機というのは、くわしい原理はわかりませんが、衛星と通信して、地球上のどこにどれだけの人間がいるかわかるという、すばらしい機械でした。この時には、まだ、地球の上に衛星があったのです。もう2万年も遅かったら、みんな流れ星になって燃えてしまっていたでしょう。


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      ルシファーとソイツは、人間探査機のしめす場所へむかいました。

      そこには、ちいさな悪魔と、年老いた人間のオスがいました。

      悪魔はルシファーにおねがいしました。「この人間は、もう年をとりすぎて、むかしを持っていられない。人間というよりは、人間のしぼりかすみたいなものだ。わざわざ殺さなくたってじきに死んでしまうから、すこしまってくれないか。」

      この悪魔は、悪魔としては、大変ふまじめだったのです。

       

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      悪魔は、にんげんが死んだら、ルシファーにかならず手紙を出すとやくそくしました。

      やくそくだなんて、この悪魔は、ほんとうにふまじめだったのですね。

      ソイツが海を見たことがないというので、ルシファーは海へとバギーを走らせました。しばしの休暇を、南の島で楽しもうなんてところでしょうか。最も、この時代は、地図の意味がほとんど無いくらい、毎日地形が変わるので、海は、見れる間に見ておかなきゃおかなきゃいけないのです。

       

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      ソイツは、初めて見る海をとても気に入りました。

      群れのなかでつがいがいないだけのことが、どれだけ小さくてつまらないことだったのかと思い知りました。そして、海をおしえてくれた、ルシファーに深く感謝しました。

      ルシファーはというと、あまりの海の大きさに、自分がなんてちいさい生き物なのかと、不安なきもちになっていました。生きているなんて、自分にはたえられないほど、とても大変なことだと思っていました。

      そして、ふたりのしあわせと不安を足しても足りないくらいの、大きくて黒い波が、ふたりをおそいました。

       

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      ソイツは海を知りませんでした。

      だから、とうぜん、泳ぎ方もしりませんでした。おまけに、ソイツのふんわりとした毛皮は、水を吸って、うんと重たくなっていました。

      ルシファーは、ソイツを抱えて泳ぎました。めくるめく変わっていく地形の中を、ルシファーは泳ぎました。

      毛皮を脱がせてしまえばいいのに、ルシファーは、けっしてそうしませんでした。

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      ルシファーとソイツは、やっと岸にたどりつきました。一体ここがどこなのか、見当もつきません。

      でも、悪魔からの手紙はきちんと届きました。というのも、蝶の羽に、悪魔の言葉を一言添えた、ちいさくて軽い、時代遅れの電報です。やっとすべての仕事が終わったんだ。ルシファーは、まだ目を覚まさないソイツを抱えて、どこか落ち着ける場所を探して、歩き始めました。


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      ルシファーはなつかしいものをみつけました。バギーです。

      ルシファーとソイツとは別の波に乗って、流れ着いていたようです。前よりさらにぼろぼろになっていますが、なんとか走れそう。おんぼろですが、ソイツを抱えて歩くよりはきっとマシです。

      ルシファーはソイツを助手席に乗せました。助手席には、はじめて会った時時にソイツに突き立てた、拳銃もありました。そして、人間探査機も…。

       

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      ころす人間がいなくなったら、殺人鬼は何になるのでしょうか。

      それとも、やっぱりそいつは、きぐるみを着た人間だったのでしょうか。

      ルシファーは自分の眉間を銃で打ち抜きました。

      ソイツは、永遠に毛皮を脱ぐ事はありませんでした。

       

       

       

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